東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)125号 判決
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯および本件審決理由の要点が、いずれも原告の主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、まず、本件審決が本願考案の要旨の認定を誤つた旨主張するが、理由がないものといわざるをえない。すなわち、成立に争いのない乙第一号証(願書に最初に添付した明細書)および甲第一号証の二(補正明細書)の全体の記載、とくに、その実用新案登録請求の範囲の項および図面の記載に徴すれば、本願考案の要旨は、審決認定のとおり、「球形の非磁性体の中に磁石を入れた磁気球」にあること明らかである。この点に関し、原告は、右磁気球の複数個使用をもつて本願考案の要旨である旨主張し、前掲甲第一号証の二(補正明細書)の考案の詳細な説明の項には、指先の運動等により球体が回転すると、内部の磁石は磁力線の方向を変えるので、これを複数個使用すると、相互に異極は吸引し合い、同極は反撥して、皮膚下の神経を刺戟し、血行を良好ならしめる旨記載されているが、原告も自認するように、複数個使用のことは、前掲補正明細書の実用新案登録請求の範囲の項に記載がないこと、前掲乙第一号証(願書に最初に添付した明細書)の実用新案登録請求の範囲の項にも、単に「球形の非磁性体(1)の中に磁性体(2)を入れた構造をなす球」と記載されているにすぎず、同書中考案の詳細な説明の項その他の部分も複数個使用の点には触れるところがないことおよび前掲甲第一号証の二(補正明細書)によると、図面の簡単な説明の項に、図面は本考案の一実施例を示す断面図である旨記載されていて、その添付図面には磁気球一個の断面図が掲載されているにすぎないことなどから見ると、前掲考案の詳細な説明の項記載の磁気球の複数個の使用ということは、本願考案の構成に欠くことのできない事項というよりむしろ単に考案実施の態様を示したにすぎないものと解するのが相当であり、原告が、補正明細書中の考案の詳細な説明の項に右磁気球の複数個使用の記載のあることをとらえて、本件審決が考案要旨の認定を誤つたと論難することは、当を得ないものである。
したがつて、本件審決が本願考案の要旨の認定を誤つたことを前提とする原告の主張は、進んで他の点について判断するまでもなく、理由がないものというほかはない。
(むすび)
三 以上説示のとおりであるから、その主張のような違法事由があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由のないことが明らかである。
〔編註〕 本件に関する図画は左のとおりである。
<省略>